シロアリのすべてがわかる!生態・種類・対処法などを解説|シロアリ1番!
COLUMN
シロアリコラム
投稿日 2019.05.23 / 更新日 2021.01.13
シロアリ駆除住まいの知識
シロアリのすべてがわかる!生態・種類・対処法などを解説

WRITER

WRITER
木村 健人
しろあり防除施工士

シロアリ・木材腐朽菌に対する木材保存・薬剤性能評価について在学中に研究。2009年新卒でテオリアハウスクリニックに入社。数千件のシロアリ調査・駆除に従事。現在はWEBマーケティングを担当。
このような方のためにこのページではこれまでのシロアリについて
- シロアリの生態
- 建物にシロアリが発生した時の対処法
- シロアリについて誤解されがちなこと
などの視点からご紹介していきます。
目次
シロアリは人目につかない場所で生活している
シロアリについて何となく「家を食べる悪い生き物」という印象を持っている人は多くても
「実際に生きているシロアリを見た」
という人は少ないのではないかと思います。
それはシロアリが人目につかない場所で生活しているからです。
シロアリは元々、光・風・空気などに直接触れることを嫌う生き物です。というのもシロアリの肌はとても弱く、光に触れると紫外線の影響で大きなダメージを受けてしまいます。
そうならないよう、シロアリは普段は地中深くの大木の根本などに巣を構えて暮らしています。
私たちが直接シロアリを見かけることがないのは、そもそもの生活圏が人間とは大きく異なることが原因です。しかし実は、シロアリは北海道の一部の地域を除いて日本全国土の下ならば、どこにでも生息している生き物なのです。
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シロアリは「アリ」とは違う生き物
シロアリは「アリ」という名前が付けられていますが、実はシロアリは生物学上はアリとは違う生き物として分類されています。
- シロアリは「ゴキブリ」の仲間
- アリは「ハチ」の仲間
というとイメージが付きやすいかも知れません。
シロアリ
クロアリ
その証拠に、シロアリとアリとでは卵から大人になるまでの成長の仕方が大きく違っています。
具体的には、シロアリは「卵→幼虫→成虫」という順番で成長し、幼虫と成虫ではほぼ見た目が変わりません。(この事を「不完全変態」といいます)
それに対してクロアリは「卵→幼虫→サナギ→成虫」という順番で成長し、幼虫はアリのイメージとは異なるイモムシのような姿をしています。(この事を「完全変態」といいます)
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すべてのシロアリは自分の「役割」を持っている
「シロアリはアリではないのにどうしてアリと名付けられたの?」と思う人もいるかも知れません。
この理由としては先程写真で見ていただいた通り、「見た目」が非常に似ているということが挙げられます。
しかし実はもう1つ共通点があります。それは「社会性を持っている」という点です。
シロアリの社会は
- 女王・王
- 副生殖虫
- ニンフ
- 兵蟻
- 職蟻
という階級に分かれており、それぞれ見た目も異なります。生まれたての幼虫の時点ではお互いに違いはありませんが、女王や王が分泌する特別なフェロモンの影響を受けてそれぞれの階級に「分化」していきます。
女王や王を含め、すべてのシロアリは自分の「役割」を持っているのです。
女王・王(ヤマトシロアリ)
副生殖虫(ヤマトシロアリ)
職蟻(ヤマトシロアリ)
兵蟻(イエシロアリ)
ニンフ(カンザイシロアリ)
羽アリ(ヤマトシロアリ)
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働きアリの「職蟻」
職蟻は働きアリとして
- エサの採取
- 女王が産んだ卵や幼虫の世話
- 巣の拡張
など様々な役割を果たします。
巣の中の9割以上のシロアリは職蟻であるといわれています。
外敵から仲間を守る「兵蟻」
兵蟻は巣を外的から守る役割を果たします。職蟻に比べてアゴが大きく発達しているのが特徴です。名前からは攻撃的な印象を受けますが、実際の動きはシロアリの種類によって異なります。
生殖活動を行う「女王・王」
女王と王は最初に巣を創設したペアとなるしろありです。巣の中でも最も奥深くの安全な場所で暮らし、卵を産んで子孫を残す事に専念します。職蟻や兵蟻などに比べて非常に長い寿命を持つのも特徴の1つです。
女王・王の代わりを務める「副生殖虫」
副生殖虫は、万が一女王や王が死んでしまった時にその代わりとなり巣を継続させます。特に女王の代わりとなる副生殖虫は実質的には女王の「分身」にあたり、副生殖虫の存在そのものが女王の非常に長い寿命の秘密です。
新たな巣を作るために外に旅立つ「ニンフ」
ニンフはシロアリの巣がある程度大きくなった時に、新しい女王・王となって自分の巣を作るために外に飛び出していくシロアリです。背中に未発達の羽がついているのが特徴で、この羽は脱皮を重ねるごとにしっかりと形作られていきます。
日本に生息するシロアリは主に3種類
シロアリと一概にいっても、世界中には約3000種のシロアリが存在することが分かっています。その大半は熱帯地域に生息しており、森林の枯死した樹木や落ち葉、腐葉土などを食べて生活しています。
日本ではその中の24種がいることが確認されていますが、そのほとんどが沖縄などの亜熱帯・熱帯地域の限られた場所にしか生息していません。
国内でよく見つかるシロアリは主に
- ヤマトシロアリ
- イエシロアリ
- アメリカカンザイシロアリ
の3種類です。
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日本で最もメジャーなシロアリは「ヤマトシロアリ」
日本で最も広い範囲で生息しているのは「ヤマトシロアリ」です。先程もご紹介したように北海道の一部の非常に寒冷な地域を除いて日本の全土に生息しています。シロアリ1番!に寄せられるシロアリ被害のご相談も、大半はヤマトシロアリによるものです。シロアリのような生き物を見かけた場合は、まずはヤマトシロアリの可能性を疑うようにしましょう。
「イエシロアリ」は温暖な地域に生息する
イエシロアリは日本の中でも温暖な地域のみに生息するシロアリで、東日本では千葉県や神奈川県の沿岸部、伊豆諸島、小笠原諸島など生息地域が限られています。イエシロアリはヤマトシロアリやアメリカカンザイシロアリに比べて活発に活動を行うシロアリで、その分被害も大きくなってしまいがちです。
外来種の「アメリカカンザイシロアリ」は全国各地に点在する
アメリカカンザイシロアリは1970年代に日本で初めて発見された外来種のシロアリで、輸入家具に紛れて日本に運ばれたといわれています。在来種のヤマトシロアリやイエシロアリと違い「土の中で生活をしない」のが特徴です。生活範囲を急速に広げることはなく、日本各地の限られた地域にのみ点在しています。
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ヤマトシロアリとイエシロアリの見た目での見分け方
ヤマトシロアリとイエシロアリを見分けるポイントとして、「兵蟻の頭の形」に注目してみましょう。ヤマトシロアリの兵蟻の頭は職蟻に比べて縦に長い形をしていますが、イエシロアリの兵蟻の頭はほぼ職蟻と同じ形をしているのがわかります。
職蟻の見た目はヤマトシロアリもイエシロアリもとても似ていて見分けることが難しいので、シロアリの群れを見かけた時はまずは「アゴの発達したシロアリ」を探し、その特徴に注目してみましょう。
ヤマトシロアリの兵蟻
イエシロアリの兵蟻
シロアリは時として人間の建物に被害を及ぼす
地球環境という大きな目で見れば大切な役割を持っているシロアリですが、シロアリのエサである「木」を住み家にしている私たちとの相性はあまりいいとは言えません。木をふんだんに使っている私たちの家はシロアリにとっては絶好のエサとなってしまいます。
シロアリは「蟻道」を作って建物に侵入する
床下に侵入したシロアリは、基礎や束柱(床下の柱)を通り住宅の木材に到達します。その時、シロアリは光や風に触れることを嫌うため蟻道(ぎどう)と呼ばれる自分の分泌物や土を混ぜ合わせて専用のトンネルを作ります。
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シロアリによる建物の被害事例
住宅に侵入したシロアリは、床下の土台や柱を食害します。木材は全て食料ですから、被害が進行すると床材や内装材、窓枠などの木材にまで食害が及びます。普段の生活でシロアリ被害に気づくケースの中で多いのは、フローリングや玄関の框(かまち)などに穴が空いているのを発見するケースなどです。
浴室の扉のシロアリ被害
フローリングのシロアリ被害
床下のシロアリ被害
建物外側のシロアリ被害
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家の中で羽のついた虫を見かけたらそれはシロアリかも?
シロアリによる被害は、建物が被害にあっているのを発見するというケース以外にも、実際のシロアリを直接見つけることで発覚する場合もあります。とはいえ、家の中で見かけるシロアリは多くの場合羽が生えており体の色も「黒色」であることから「え?これって本当にシロアリなの?」と疑ってしまう原因の1つではないかと思います。実際には「羽のついたアリ」の正体は色々な場合がありますのでまずは「正体」を明らかにすることが大切です。
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シロアリとクロアリの羽アリは間違われがち
シロアリは私たちの前には滅多に姿を見せない生き物でイメージがしづらく、しかも地上に羽アリとして姿を表すときのシロアリは私たちの「シロアリは白い」というイメージに反して「黒い体」になっています。
そのため、家の中で目の前の羽アリがシロアリかクロアリかをパッと判断するのは難しいかも知れません。
シロアリとクロアリを見分けるポイントとしては
- 触角の形
- 羽の形
- 体のくびれ
などに注目してみましょう。
シロアリの羽アリ
クロアリの羽アリ
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これってシロアリかな?と思った時にすべきこと
家の中で大量の羽のついたアリが発生したり、ボロボロになった建物を見つけてしまった時には思わずパニックになってしまうかも知れませんが、大切なのは「冷静に対処すること」です。
というのも、羽アリには建物や人間に害を及ぼすことはありませんし、シロアリが家を食べるといっても数日程度の僅かな期間で被害が大きく進行することはありません。
人間は焦ってしまうと冷静な判断ができなくなりがちで、悪徳業者に高額な費用を払ってしまった、というような更に悪い状況に陥ってしまうリスクも大きくなります。
まずは落ち着いて現状を正しく認識することが、適切な行動につながります。
まずは業者に調査を依頼するための準備をしよう
シロアリの被害が疑われる場合はまずは専門家に見てもらうための準備を行いましょう
具体的には
- 落ちていた羽を保管しておく
- 建物の図面がある場合は用意する
- 点検口がある場所を確認し、中の荷物を整理しておく
などです。
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シロアリを見かけても殺虫スプレーは使わない方がいい
多くの人は家の中に羽アリが発生すると「とりあえず殺虫スプレーを使おう」と思いがちですがそれは「表面的な対処法」にしかならず、むしろ状況を悪化させてしまうリスクもあります。家の中に発生した羽アリを駆除する時は、ビニール袋や掃除機で対応するようにしましょう。
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シロアリ駆除にかかる費用は業者によりまちまち
シロアリ駆除にかかる費用は、保証の有無や施工単価の計算方法、業務形態などによりまちまちです。しっかりとサービスの内容に見合う価格なのか、サービスを保証してくれる信頼性のある業者なのか、しっかり分析しておくことが大切です。
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間違った知識がシロアリの被害を広げてしまうことも
シロアリはあまり身近な生き物ではない分、誤った知識を持ってしまっている方を見かけることがあります。
例えば
- 加圧注入材を使えば被害に遭わない
- 床下がコンクリートなら心配は不要
- 鉄骨の建物だから心配は不要
などです。これらはいずれも「誤り」であると言わざるを得ません。
どうして加圧注入材を使っていてもシロアリ被害に遭うの?意外な落とし穴とは
住宅の中には構造体に「加圧注入材」を採用しているものもあります。加圧注入材はシロアリを予防する処理が施されている材木ですが、加圧注入材を使っているからといって建物自体のシロアリの心配がなくなるわけではなく、実際に被害に遭っている物件が多く存在します。それは、すべての木材が加圧注入材を使用しているわけではないことや、加圧注入材にはシロアリの建物への侵入そのものを止める働きがない事が原因です。
www.shiroari-ichiban.com/contents/column/pressurized_injection_material/
シロアリはコンクリートを通過できる
シロアリが普段は土の中に生息し、土から床下に上がってくるということは、床下がコンクリートで覆われていれば大丈夫なのでしょうか。実は多くの方が「コンクリートなら大丈夫」と思われています。しかし、我々シロアリ駆除業者の視点でお話をすると、コンクリートで覆われた住宅でもシロアリ被害はよく見ます。それは稀なケースでもなく、床下が土やシートの場合と同様に一般的に見られる現象なのです。構造や防湿上は全く問題が無いのですが、小さな昆虫であるシロアリからすれば、たった0.6mmの隙間があれば通ることが出来てしまうのです。
www.shiroari-ichiban.com/contents/column/concrete-termites/
鉄骨造でもシロアリ被害に遭う可能性がある
「鉄骨造ならばシロアリの心配はしなくても大丈夫」と考えているとすればそれは誤りです。
確かに主要構造材はシロアリの食害は受けません。
しかし、鉄骨でも床を組む束柱、大引、根太などの構造体や、内装材である幅木、上り框、敷居、フローリングなどには木材が使用されている場合が多く、シロアリの心配がないとはいい切れません。
www.shiroari-ichiban.com/contents/column/steel-frame-house/
建物がシロアリに食べられないようにする方法
シロアリ1番!の運営会社であるテオリアハウスクリニックは、「シロアリに 食われて泣くより まず予防」をモットーにシロアリの「駆除」ではなく「予防」をあらかじめ行なっておくことをおすすめしています。また、薬剤の効果は時間が経てば消失するので、「1回やってそれでおしまい!」というわけにはいきません。
決められた期間ごとに継続して行うことが大切です。
www.shiroari-ichiban.com/contents/column/termite-control-5years/
ちなみに・・・自然界でのシロアリは天敵だらけ!
シロアリは「建物を食べる害虫」というイメージが強いですが、自然界では非常に弱い生き物であり、たくさんの天敵が存在する事で知られています。しかしシロアリも様々な知恵を使って天敵から身を守ろうとしています。シロアリは人間よりも遥かに長い間地球上に存在する生き物ですが、それもシロアリが様々な知恵を出して考えた生き残りをかけた作戦の結果であるといえるでしょう。
www.shiroari-ichiban.com/contents/column/termite_tenteki/
まとめ
ここまでシロアリについて、生態・人間の家に及ぼす被害・駆除方法・あらかじめ予防を行う方法など様々な視点で書かれた記事をご紹介してきました。シロアリは地球上では”益虫”として無くてはならない存在です。しかし私たちが住む住宅もまた、大切な財産であり無くてはならないものです。
もともとシロアリが暮らしていた土地に、上から家を建てて暮らし始めたのは私たち人間ですので、シロアリが餌である住宅の木材を食べてしまうのは必然なのです。そんなシロアリと共存しつつ、住宅の劣化を防ぐために大切なのはやはり「予防」です。
事前に予防処置がなされていれば、住宅がシロアリの劣化を受けることも、シロアリを無闇に殺虫することも無くなります。
これをきっかけに、住宅の健全化とシロアリ予防に対する意識が広まっていただけると幸いです。