鉄骨造の住宅でもシロアリ被害!?鉄骨とシロアリの関係とは|シロアリ1番!

COLUMN

シロアリコラム

投稿日 2018.08.23 / 更新日 2023.12.15

シロアリ駆除

鉄骨造の住宅でもシロアリ被害!?鉄骨とシロアリの関係とは

WRITER

田中勇史

WRITER

田中 勇史

(公社)日本しろあり対策協会 防除技術委員

田中勇史

大学では昆虫類の研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。これまで3000件を超える家屋の床下を調査。皇居内の施設や帝釈天といった重要文化財の蟻害調査も実施。大学の海外調査にも協力。しろあり防除施工士。白蟻専科研究室長。
YouTube:シロアリ駆除Channel

「うちは鉄骨だからシロアリは関係ない」
「鉄骨なんだからシロアリは出ないはず」

これらは正しい意見に聞こえますが実はそうでもありません。シロアリ被害は軽量鉄骨や重量鉄骨などの鉄骨造住宅でも起こります。シロアリ被害は木造住宅でしか起こらないと誤解している方がとっても多いのですが、実は住まいの構造とシロアリ被害は全く関係ないのです。そこで当記事では、鉄骨とシロアリ被害の関係について解説します。

シロアリ1番!が選ばれる理由

鉄骨でもシロアリ被害を受ける理由

骨組みに鉄骨が使われる鉄骨造住宅でシロアリ被害が起きるなんて信じられない、という方は非常に多いです。ですが、鉄骨であってもシロアリ被害は頻繁に発生します。一体なぜシロアリの被害が起きてしまうのでしょうか。

鉄骨は骨組み以外木材をふんだんに使っている

実は鉄骨の住宅には木材が多用されています。骨組みは鉄骨で出来ていても、下地や床組材、内装材などはどれも木材です。鉄骨は食害しなくても、シロアリにとってのエサである木材が使われている以上、鉄骨住宅だからといっても安心はできません。

鉄骨造

(写真)建築中の鉄骨造。一見木材が使われていないように見える。
新築の内装

(写真)新築の内装。内装には木材がふんだんに使われている。
鉄骨で木材が使われるポイント

内装材(フローリング、框、化粧柱、巾木、敷居など)、床組(根太など)、下地(木下地の場合)など

シロアリは木造と鉄骨を選んでいない

そもそもシロアリは建物構造を選んで侵入していません。その時たまたま侵入した建物が「木造だった」「鉄骨だった」という違いです。そして、木造であっても鉄骨であっても、木材があるところまで蟻道を伸ばして食害をはじめます。

つまり、事実上、シロアリに侵入される確率は木造と鉄骨造で変わらない、ということです。

鉄骨造がシロアリ被害で倒壊する可能性は?

鉄骨でもシロアリ被害を受けるということは、建物が倒壊する可能性もあるのでしょうか。シロアリは木材部分を食害し、鉄骨部分は食べることはありません。そのため、構造となる鉄骨は守られるため倒壊する可能性は無い、と考えることができます。

しかしながら、食害部にはシロアリによって水分が供給されるため、鉄骨の大敵である水分による建物寿命低下などのリスクは付きまといます。また、シロアリ被害を受けた部材は交換する必要があるため、「倒壊しないなら大丈夫」ということではありません。

鉄骨造のシロアリ被害は木材だけではない

シロアリは木材を食害する以外に、コンクリートや断熱材に被害を及ぼすことがあります。特に断熱材はシロアリの加害を受けやすく、床断熱材や配管の保温材などを損傷する事例が頻発しています。

配管のシロアリ被害

(写真)配管の保温材のシロアリ被害。
断熱材のシロアリ被害

(写真)床断熱材のシロアリ被害。無数の穴が開けられている。

 
これらの被害はシロアリが断熱材を食べているのではなく通路として穴を開けているだけですが、柔らかく温かい断熱材はシロアリにとって好都合な侵入経路と言えそうです。

鉄骨住宅でシロアリ被害が発生する場所は?

木造住宅の場合、シロアリは柱や土台などの構造部材を中心に被害を及ぼします。一方、構造部材が鉄骨(金属)でできている鉄骨住宅の場合は、構造部材のさらに上のフローリングや内装材、和室の畳、玄関の上がり框など、室内から見える場所に使われている木材に被害を及ぼします。

皆さんのお家をよく見てください。お部屋のいたるところに木材が使われていませんか?木材が使われている以上、シロアリ被害を受ける可能性はゼロではありません。

鉄骨住宅で被害が多いのは玄関

玄関構造は木造も鉄骨も変わりません。そのため、鉄骨造に限らない話なのですがシロアリ被害が最も多いのは玄関です。玄関はタイルで密閉されており、タイル裏側の見えない僅かな隙間がシロアリの絶好の侵入ポイントとなっています。

これは床下からも玄関側からも初期の被害を見つけることが非常に困難なため、木材がペコペコして気づいたときには相当シロアリ被害が進んでいます。

束柱(床を支える柱)が鋼製でも…

過去に弊社が調査した鉄骨造住宅の床下では、鋼製の束柱に蟻道をつくり侵入しているケースが複数確認されています。以前は束柱=木材でしたが、最近の束柱は鋼製のものが主流です。「鋼製であればシロアリにも安心」という訳にはいかなそうですね。

鉄骨住宅の多くが1階の床構造に木材を使用している

実は軽量鉄骨造、重量鉄骨造ともに、1階の床組(床を支える部材)に木材を使用していることがほとんどです。ですから、「床が軋む、ふかふかする」という原因がシロアリだったということは珍しくありません。そして最悪の場合、床が落ちてしまう可能性もあります。

鉄骨のシロアリ被害

築半年、掘りごたつの被害

掘りごたつは床が一段低くなった構造です。床が低いということは、それだけ地面に近くなります。場合によっては地面に接していることもあるでしょう。しかし、そういう場所ほどシロアリ被害は起こりやすくなります。シロアリは土の中から上がって住宅に侵入しますので、土の表面に近い場所の木材を真っ先に食害する可能性が高いです。

私が以前調査した鉄骨造の物件では、築半年で掘りごたつの被害を受けてしまった事例があります。鉄骨造の中には、新築時にシロアリの予防工事を行わない地域やメーカーがあるため、築浅であっても安心することはできません。

土間コンクリートやベタ基礎なら大丈夫?

ベタ基礎からのシロアリの侵入

また、「床下がコンクリートで覆われているから安心」、と思われる方もいらっしゃいます。しかし実際には、防湿土間コンクリートやベタ基礎の建物でもシロアリ被害は発生しています。乾燥によるコンクリートの収縮でできるわずかな隙間であったり、配管を通す穴、打ち継ぎ金具の僅かな隙間などから侵入してきます。コンクリートとシロアリの関係について詳しくは下記にもまとめております。あわせてご参照ください。

鉄骨造住宅でもしっかりとシロアリ対策工事を

鉄骨造の住宅は柱などの構造部材が食害を受けるわけではないので、建物の強度という面では安心できます。しかし、室内の内装材がシロアリに食べられているのは気分が良いものではありません。

また、被害が進行してしまうと内装材などの部材交換に多くの費用が発生するケースもあります。他人事とは決して思わずに、まずはあなたのお家にシロアリ被害の兆候がないかどうかを確認してみましょう。

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