シロアリの生態を徹底解説!地球上の大先輩の秘密に迫る!|シロアリ1番!

COLUMN

シロアリコラム

投稿日 2018.05.06 / 更新日 2021.01.13

シロアリ駆除

シロアリの生態を徹底解説!地球上の大先輩の秘密に迫る!

ヤマトシロアリの職蟻

WRITER

田中勇史

WRITER

田中 勇史

しろあり防除施工士

田中勇史

大学で昆虫類、特にニホンミツバチ・スズメバチに関する研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。シロアリにとどまらずハチやアリ、害虫全般の駆除・調査に従事。

シロアリの生態について知りたい人「シロアリの生態について勉強しようと思います。シロアリがどこでどのような生活をしているのか詳しく知りたいです。」

 

このような疑問にお答えします。このページを読んでいただくとシロアリの生態について

  • 普通の「アリ」との違い
  • シロアリがとる集団行動の仕組み
  • シロアリが自分たちを守るための工夫

 

などの視点から知ることができます。シロアリは人間が誕生するはるか昔、3億年も前から地球上に存在する生き物です。3億年前というと、恐竜すらも存在しなかった時代。そんな時代から今まで絶滅することもなく生活を繋げてきたシロアリはどのような生活をしてきたのでしょうか。その生態について見ていきましょう!

シロアリの生態は「アリ」とは異なる

シロアリは名前からして、“アリの仲間“と思われがちですが、異なる昆虫です。

アリは「完全変態」と呼ばれる生き物で、卵・幼虫・蛹・成虫という順番で成長しますが、幼虫はウジ虫のような形をしています。私たちが普段良く見かけるアリはすべて「成虫」なのです。一方でシロアリは「不完全変態」と呼ばれる生き物です。シロアリは卵・幼虫・成虫と成長しますが、幼虫と成虫では大きさの違いこそあるものの、その外見は同じ見た目をしています。

また、クロアリやハチの幼虫は生き抜く力が弱く親や仲間に助けてもらわなければ生きていけませんが、シロアリは卵から孵化してすぐに動き回れるようになります。

この違いは「それぞれのルーツの違い」から生まれます。

シロアリはゴキブリから進化した虫で、シロアリの「朽ちた樹木を食べる」という習性は”キゴキブリ属”に由来しているとも言われています。また、シロアリは「エサを調達する」「巣を作る」「外敵と戦う」などの役割を分担して共同生活を始めた最初の生物といわれています。

一方でアリは何の仲間になるのかというと、「ハチ」から進化した昆虫です。じっくり観察してみると、ハチとアリは大きさが異なるものの、胴体のクビレなどの特徴が似ていますよね。アリやハチが地球上に現れたのは1億数千万年前と言われていますが、対してシロアリは約3億年前から生息している大先輩な生物なのです。

では、シロアリはどうして「アリ」と名付けられたのでしょうか。それは「似ているから」です。

卵から孵化して幼虫となったシロアリは、やがて職蟻や兵蟻、有翅虫などに成長し(この事を「分化」と呼びます)、女王と王を中心に数万から100万という大きな集団を形成して人間のような社会生活を営みます。

シロアリとアリが全く違う昆虫でありながら名前が似ているのは、社会生活をおこなう生態、形状、大きさなどの類似性から来ているのです。

ちなみに、シロアリと”普通のアリ”にも実は意外な関係性があります。それは、「天敵」であるということです。アリはシロアリを捕食し、シロアリはアリに捕食される関係にあります。被害現場でシロアリの被害材にアリの一種「オオハリアリ」が紛れ込んでいることがありますが、これは紛れもなくシロアリを捕食しに来ているのです。

シロアリは集団行動をすることで生態を保つ生き物

シロアリの生態について「集団行動」という側面からもう少し詳しく見ていきましょう。ここではシロアリの巣(コロニー)での生態についてご紹介していきます。

シロアリの役割分担の方法

先ほどシロアリは生まれてすぐに動き回れるようになるとご紹介しましたが、そのことからすべてのシロアリはコロニー内において仕事や役割を「階級」という形で与えられています。

シロアリの職業を分類すると、木材を食害するシロアリ、巣を作るシロアリなど、生活を支えるシロアリは職蟻(しょくぎ)と呼ばれ、外敵から巣を守るためのアリは兵蟻(へいぎ)と呼ばれます。また、子孫を増やすために新しい巣をつくる役目をもつ羽アリなどもいます。

シロアリの役割分担は具体的には

【女王・王】一つの巣に1頭ずつおり、生殖活動に専念します
【副生殖虫】女王・王が死亡したときに代わりとなります
【ニンフ 】新しい巣をつくるために羽アリとなって飛び立つ前の段階です
【兵蟻  】全体の約3%ほどで、外敵と戦ったり偵察、仲間の護衛をします
【職蟻  】全体の90%以上を占め、エサの採取、卵・幼虫の世話、巣の構築等をこなします

と分かれています。

シロアリは幼虫の段階ではすべてが同じですが、女王・王の分泌するフェロモンによってどの階級に分化するかが決まります。コロニーがある程度大きくなるとニンフが増え、その後ニンフは羽アリとなり外部に一斉に飛び立ちます。

通常、シロアリが人の目に触れるのはこのときだけで、シロアリ被害のある家屋では浴室や洗面所、玄関など室内から大量に発生します。
羽アリは数十から多いと数百頭も短時間で一気に発生します。そのためその数の多さから羽アリが出切ったらシロアリが居なくなると誤解されてしまいがちですが、羽アリは一つのコロニー(巣)の僅か数%に過ぎません。巣の中にはまだ大多数のシロアリが活動しているのです。

シロアリは「集団行動」で繁栄を支えてきた

このように人間のような「社会性」を持ちながら行動していることがシロアリが自身の生態を守ってきた秘密であると言えます。

クロアリやハチは基本的には集団行動を行いますが、俊敏な動きを活かした単独行動を行うことも可能です。これは、外骨格という硬い皮膚を持っているのである程度なら外敵から身を守ることができるからです。

一方、シロアリの皮膚は未発達のままであり、クロアリやハチのように戦闘能力が高いとはいえません。また、動きも遅く、外敵から身を守る術にも乏しいことから、常に集団で行動しています。シロアリは、集団行動することで外敵からの被害を軽減しており、シロアリにとっては集団行動そのものがクロアリやハチにとっての外骨格(バリア)の役割を果たしています。

こうした社会性の高さによる行動が、シロアリの3億年以上にもおよぶ繁栄を支えてきたといえます。

オスとメスのバランスの良さが巣のバランスを保つ秘訣

集団で生活を行うという点ではシロアリとアリは似ていますが、その実態はかなり異なります。

クロアリやハチに代表される「膜翅目(まくしもく)」と呼ばれる昆虫のグループは、メスのみの社会を形成しており、オスは年に一度だけ交尾のために巣へやってくる程度です。しかも、交尾後にオスは死んでしまいます。完全なメス社会だといえるでしょう。

対して、シロアリにはオス・メスの区別があり、膜翅目と比べるとオス・メスのバランスが良いです。生殖能力は基本的に未発達ですが、生殖階級に成長すると生殖能力が発現します。(種によっては多少ルールが異なります)。これは「シロアリの巣(コロニー)内におけるオス・メスのバランスを保つため」という説があり、種族を繁栄させる能力が長けていることが分かります。

シロアリが行なっている自身の生態を守るための工夫

シロアリに食べられた木材

ここからはシロアリが自身の生態を守るために行なっている工夫についてご紹介していきます。

シロアリはバクテリアと共存して栄養を撮っている

シロアリが「木を食べる生き物である」ということは何となくイメージとして持っていると思いますが、実際にどのように栄養を取っているのかについてはあまり知らない人が多いのではないかと思います。

シロアリは木材の主成分である「セルロース」を栄養としています。ですので、セルロースが原料の本や新聞紙、ダンボールなども栄養にすることができます。木材が原料のものであれば、基本的に何でも食べてしまうのです。むしろ、新聞紙やダンボールは木材に比べ柔らかいため、シロアリからすると”ご馳走”です。

しかし実はシロアリが木を消化できるわけではありません。シロアリがセルロースを分解・利用できるのは、後腸内に原生動物が住み着いているからで、この原生生物がいないとシロアリはうまく木材を分解することができません。

シロアリは他の生き物と「共生」することで自身の生態を保っているのです。

シロアリは「フェロモン」を利用して生活している

シロアリは基本的には光の当たらない場所で生活をしている生き物です。そういった生き物の多くは目が退化している事が多いですが、シロアリも同様にほとんど目で見ることができません。

シロアリは目の代わりに様々な場面で「フェロモン」を利用します。

例えば働きアリが出す「道しるべフェロモン」は仲間が自分と同じ場所を移動できるようにするためのもので、シロアリはこのフェロモンを利用して行列で移動しています。

その他にも、万が一巣が襲われたときに仲間に危険を知らせるための「警報フェロモン」や先ほどのシロアリを「階級分け」するのに利用する「階級分化調節フェロモン」などがあります。フェロモンはシロアリの生態には必要不可欠なのです。

独自の階級「疑職蟻」を持つ種も存在する

シロアリには「職蟻」と呼ばれる階級が存在することをご紹介しましたが、シロアリの中には他の種類にはない独自の生態を持っているものも存在します。その例が「カンザイシロアリ」です。カンザイシロアリは「疑職蟻(ぎしょくぎ)」という独自の階級があります。

一般的にシロアリが分化するには兵蟻やニンフは職蟻からしか分化できず、羽蟻(新女王・新王)はニンフからしか分化できないというのが基本です。しかし疑職蟻を持つカンザイシロアリは例外です。疑職蟻は「全ての形態に分化する」能力を持っています。このことは種を存続させる上で大きな強みになります。

例えばヤマトシロアリは「何かの拍子に個体数が大幅に減ってしまって職蟻だけが生き残った」という状況になったとしてもその巣は衰退が運命づけられています(ヤマトシロアリは25 匹生き残っていれば再生可能と言われていますが、実際のところは再生されることはほとんどありません)。これは、シロアリの世界では女王が仮に死んでしまった場合でも女王の代わりになる副生殖虫は比較的簡単に発生するのですが、王という存在は特別で滅多に代わりの王となる個体は発生しないからです。

しかし疑職蟻がほんの少量生き残ってしまうだけでシロアリは即座に分化して副生殖虫(副女王・副王)を作り出せるので、他のシロアリに比べ圧倒的に巣が再構築されるケースが多いのです。これはシロアリが自身の生態を守るために編み出した生き残り戦略であり、様々な知恵を絞って生み出された究極の戦略とも言えます。

「数」で勝負することを捨てる代わりに疑職蟻という「再生能力」に特化した特殊能力を進化させていったというわけです。

シロアリは「地球全体の生態」という視点では益虫

多くの人達はシロアリというと「悪い虫」というイメージを持っていると思います。これは私たちがシロアリを見かけるのが家に被害が出ていたり、敷地の木材や枕木がボロボロになっていた、などのネガティブな状況で見つける場合が多いからだと思います。

しかし地球上に存在する約3100種ほどのシロアリの内、建築物などを加害して人間の生活に悪影響を及ぼす主要なものは104種にすぎません。多少とも影響を与えるものまで含めても371種ほどです。それ以外の大半は森林に生息して枯死木や落ち葉を食物として物質循環に大きな役割を果たしています。

特に熱帯や亜熱帯地域ではシロアリが作る網の目状のトンネルが水分や通気など土壌条件の改良に重要な働きをしています。また、人間の生活に影響を及ぼすシロアリであっても、自然界では枯れ木やリターの分解を助ける益虫であることに間違いありません。人間の生活に関わると害虫として扱われてしまいますが、シロアリが地中で生活しているときや自然界では”絶対に必要な存在”なのです。

また、2019年の最新の研究ではシロアリが”干ばつに見舞われた森を健全に保つ”役割を果たしていることも分かってきています。シロアリが多い森林では「土壌の湿度」が保たれるため多くの木々が育ち、長期間の干ばつでもその森林の生態系に異常がみられなかったのです。

まとめ

今回はシロアリの生態についてご紹介してきました。人間の生活史をシロアリが繁栄してきた期間に当てはめるとたった0.1%ほどにしかなりません。
そんなはるか昔から絶滅することなく生存してきたシロアリは、自然界全体で見てみればとっても重要な生き物です。

確かに木を使って造られている家に住む我々にとっては建物の害虫でしかありませんので「シロアリは全て駆除しなくては!」と考えてしまいます、しかし家の外であれば自然界同様シロアリはどこにでも生息する生き物です。

シロアリが家に入ってこないように予め予防(対策)をしておこうという意識を持てばシロアリと共存することが可能なのです。