シロアリの体内に住みつく原生生物の秘密に迫る|シロアリ1番!

COLUMN

シロアリコラム

投稿日 2021.04.30 / 更新日 2023.08.31

シロアリについて

シロアリの体内に住みつく原生生物の秘密に迫る

コラムタイトル

WRITER

田中勇史

WRITER

田中 勇史

(公社)日本しろあり対策協会 防除技術委員

田中勇史

大学では昆虫類の研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。これまで3000件を超える家屋の床下を調査。皇居内の施設や帝釈天といった重要文化財の蟻害調査も実施。大学の海外調査にも協力。しろあり防除施工士。白蟻専科研究室長。
YouTube:シロアリ駆除Channel

皆さんは共生という言葉を聞いたことがありますか。違う種類の生き物同士がお互いに助け合って生きるという意味なのですが、実はシロアリもある生き物と共生関係にあります。それは、原生生物と呼ばれる生き物たちです。今回はシロアリと原生生物との関係についてお話しします。

シロアリ1番!が選ばれる理由

シロアリの体内で暮らす原生生物の正体

シロアリの体内で暮らす原生生物とは何なのか。これをお話しするためにはまず、真核生物・原核生物に触れておく必要があります。

真核生物とは、体の細胞が細胞壁を持っている生き物のことを言います。原核生物は逆にそれ以外の生物、つまり細胞中に細胞壁を持たない生き物のことですが、有名どころとして乳酸菌や大腸菌が挙げられます。さて、原生生物は真核生物と原核生物、どちらに分類されるでしょうか。

答えは真核生物です。動物や植物という括り以外にも真核生物が存在するのです。似たような仲間として真核藻、アメーバ、ゾウリムシといった原生生物が挙げられます。

シロアリと原生生物の関係

シロアリには食べ物である木を分解し栄養とするために特殊な機能が備わっています。それは、腸内で原生生物を共生させる機能です。彼らの力を借りることでスムーズな栄養変換が可能となります。普通、木の成分であるセルロースを分解し、栄養とすることは昆虫には到底真似できるものではないのです。

シロアリによって分解された木材

では、どのように分解して栄養とするのでしょうか。まずシロアリが摂取した木を腸まで運ぶところから始まります。シロアリの腸は前腸、中腸、後腸と3つに分かれています。シロアリが原生生物を住まわせているのは後腸。セルロースは後腸で最終的に酢酸、二酸化炭素、水素に変換され、この時できた酢酸がシロアリのエネルギー源となります。

ここからが面白いのですが、シロアリは栄養となる酢酸を作ることはできても吸収することができません。実はシロアリが栄養を吸収する器官は中腸にあります。つまり、後腸に到達した時点で吸収ができる中腸を通り越してしまっているのです。せっかく作った栄養もみすみす体外に出すしかありません。

ヤマトシロアリの兵蟻

ではシロアリはどうやって吸収してるのか。それは他の仲間の排出物を食べること。これにより栄養を再び中腸に持って行き、晴れて体内に吸収することができます。

なんとも不器用な生活をしていますが、なかなかこんな生き方をしている生物はいません。とはいえシロアリは1億5千万年もの間姿を変えずに生きてきた生き物です。これが逆に最も効率の良い方法なのかもしれません。

シロアリと原生生物の研究には将来性がある理由

実はシロアリと原生生物の関係は、私たちの生活を大きく変える可能性を秘めています。現在の深刻な国際問題に地球温暖化があります。この問題を解決するのがシロアリになるかも知れないのです。

温室効果ガスの二酸化炭素の排出削減を実現するために必要な有力対策として、植物バイオマスが注目されました。トウモロコシからバイオエタノールの生成を行うということでニュースにもなりましたが、現在は食料であるトウモロコシをエネルギーに変えるのはどうなの?という問題に発展しました。

そういう経緯もありセルロース系バイオマスからのバイオエタノール生産に切り替える動きが活発化しているのです。とはいえ、セルロースを分解することは先程も言いましたが並大抵のことではありません。そこで注目され始めたのがシロアリです。

セルロースを難なく分解してしまうシロアリと原生生物の分解メカニズムをどうにか応用できないかと、様々な研究がされるようになっています。この研究が進歩すればより素早く、より簡潔に燃料であるグルコースやバイオエタノールの生産が可能となります。シロアリを利用したバイオエタノールの研究は2010年代より多くの研究者により取り組まれており、今後大きな将来性が期待されています。

まとめ

今回はシロアリと原生生物の関係についてご紹介しました。シロアリは何億年も前から地球上にいる、とても奥が深い生き物です。シロアリの研究が将来、私たちの生活を大きく変える日がくるかも知れませんね。

シロアリ1番!が選ばれる理由

関連駆除実績

  • 関連する記事はありません。