シロアリのフェロモンって?コミュニケーション力の高さの秘密をご紹介!
COLUMN
シロアリコラム
投稿日 2021.04.08
シロアリ駆除
シロアリのフェロモンって?コミュニケーション力の高さの秘密をご紹介!

WRITER

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田中 勇史
しろあり防除施工士

大学で昆虫類、特にニホンミツバチ・スズメバチに関する研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。シロアリにとどまらずハチやアリ、害虫全般の駆除・調査に従事。
こんにちは。シロアリ1番!の田中です。
今回お話ししたいのは昆虫の「フェロモン」。
あなたはフェロモンについてどれくらいご存じでしょうか。
においみたいなもの?
そうですね。大体あっています。
ではフェロモンが昆虫の生活にどれくらい役立っているかは想像できるでしょうか。
昆虫にとってフェロモンはまさに「言葉」そのものです。
シロアリを含む、多くの昆虫たちはフェロモンのおかげで複雑な作業を行ったり、「社会」そのものを作る事ができているのです。
このページは、シロアリがいかにフェロモンを使いこなしているかをご紹介しています。
自分でいうのも何ですがかなり濃い内容になっています。
このページを読んでいただくと中学生の夏休みの自由研究くらいは簡単に作れてしまいます。
ぜひ最後までお楽しみください!
なぜシロアリはフェロモンを出すのか
シロアリのフェロモンには
- 仲間の行動を変える
- 仲間の体の成長を変える
という2つの力があります。
前者を「解発フェロモン」、後者を「起動フェロモン」といいます。
シロアリはこの2種類のフェロモンを上手く使いこなしながら集団生活を送っているのです。
シロアリのフェロモンの種類
では具体的にどのようなフェロモンがあるのでしょうか。
- 性誘引フェロモン
- 階級分化制御フェロモンおよび階級分化ホルモン
- 警報フェロモン
- 道しるべフェロモン
という4つのフェロモンがあります。
詳しく見ていきましょう。
①性誘引フェロモン
「性誘引フェロモン」は雌が雄を引き寄せるためのフェロモンです。
シロアリに限らず多くの昆虫が性誘引フェロモン使います。
性誘引フェロモンがあるから雄は交尾相手の雌を見つけることができるのです。
人間でいうマッチングアプリみたいなものでしょう。
シロアリはいつどのように性誘引フェロモンを使うのでしょうか。
まずはシロアリの「出会い」の仕組みをご紹介します。
先ほど、「シロアリは集団生活をしている」とお伝えしました。ですが1つの巣の中で数が増えてきた時、一部のシロアリ達は新しい巣を作るために羽をつけてみんなで外に飛び出します。
この事を「群飛」といいます。
巣から飛び立ったシロアリはやがて地面に着地して羽を切り落とし、ペアを見つけます。このつがいのシロアリ達が後の王と女王です。
シロアリのペアは本当に仲良しです。
雄のシロアリは雌のシロアリの後ろに常にくっつき、巣を作る時も、巣を作った後も、方ときも離れることはありません。
この仲の良さの秘密こそ「性誘引フェロモン」です。
雄のシロアリが迷わずに雌のシロアリを見つけられるのも
ずっと一緒に行動できるのも
雌のシロアリが出す性誘引フェロモンのおかげなのです。
ちなみにですが、性誘引フェロモンは昆虫ごとにオリジナルで、これまで1000種類以上が見つかっています。
なので雄のシロアリが
「メスの気配をたどっていったら待ち受けていたのはイモムシだった」
ということは起こりません。
また、性フェロモンは基本的には雌が使うものですが、雄が出す昆虫も存在します。
②階級分化制御フェロモン
シロアリには、
- 共同で暮らしている
- 1匹1匹に自分の「役割」がある
という特徴があります。
学校でのクラスの係決めのようなものですね。
その仕組みを作る上で欠かせないのが「階級分化制御フェロモン」です。
階級分化制御フェロモンを主に使うのは女王アリです。
ですので、「女王物質」と呼ばれることもあります。
では階級分化制御フェロモンにはどんな力があるのでしょうか。
それは「他のシロアリを女王にさせない力」です。
女王の役割を一言で言うと「卵を産むこと」にあります。階級分化制御フェロモンの影響を受けたシロアリは卵を産むための「卵巣」が育たなくなるのです。
人間と違ってシロアリは「自分の」子孫を残すことに執着がありません。
女王だけが卵を産むのも「私免許持ってないから代わりに車運転してよ」くらいの感覚なのです。
ちなみに・・・
「階級分化制御フェロモン」と対照的な物質に「階級分化制御ホルモン」があります。
シロアリのように1匹1匹に「役割」がある昆虫は、その役割に応じて見た目が変わってきます。
例えばシロアリの中でも、外敵から仲間を守る「兵蟻」は他のシロアリよりアゴが大きく発達していますし、将来巣の外に飛び立つ予定の「ニンフ」の背中には翅鞘と呼ばれる羽の収納スペースがくっついています。
こういった違いは「階級分化ホルモン」により引き起こされます。
シロアリの体内には「幼若ホルモン」という階級分化ホルモンがあり、この濃度が見た目の変化に大きく関係していると言われています。
シロアリの見た目は卵から幼虫にまるまでは全て同じですが、フェロモンやホルモンの働きが複雑に絡み合い、だんだんと見た目や役割が分かれていきます。
③警報フェロモン
警報フェロモンは仲間に危険が迫っている事を知らせるフェロモンです。警報フェロモンの使い道はシロアリにより異なります。
例えば、ヤマトシロアリは警報フェロモンをほぼ「逃げるため」に使います。
自分の体や蟻道、巣などに対し何らかの刺激が加わった時、危険が迫っていることを他の仲間に知らせるのです。
まさに「掛け声」のようなものですね。
一方、気性の荒いイエシロアリは警報フェロモンを攻撃体勢を整えるのに使います。
フェロモンの反応があった箇所に大量の兵蟻がどんどんと集まってきて、外部の驚異を排除しようとします。
この傾向は海外の体格が大きなシロアリほど強くなります。
参考までに私がタイでとったスミオオキノコシロアリの写真を掲載します。
兵蟻が集まり攻撃体勢をとっているところです。
④道しるべフェロモン
道しるべフェロモンはシロアリだけでなくクロアリでも有名です。目印となる匂い成分を道中に残すことでどこに餌があり、どれだけ巣から離れているかなどの情報を得るために用いられます。
シロアリの巣から餌となる木材までの間にこのフェロモンを付けておくことで迷うことなく行き来することが可能となるのです。
シロアリは餌を探している時、巣から放射状に拡散しながら餌となる木材を探索します。
一度餌を発見するとすぐさま道しるべフェロモンが処理され、やがて全てのシロアリが一直線にその餌めがけて巣を往復するようになります。
まとめ
今回はシロアリのフェロモンについてまとめてきました。
シロアリは言葉は話しませんがしっかりと仲間とコミュニケーションを取りながら生活をしています
これも全てフェロモンがあるからできる事なのです。目に見えない電波を利用して私たちのスマートフォンが通信できるように、シロアリも目に見えないフェロモンでやりとりを行っています。
もし、「シロアリについてもっと詳しく知りたい!」と思っていただけたようでしたら、こちらのページでも詳しく紹介していますのでぜひご覧ください!
www.shiroari-ichiban.com/contents/column/shiroari/