アメリカカンザイシロアリの駆除に密着!|シロアリ1番!

COLUMN

シロアリコラム

投稿日 2018.05.28 / 更新日 2022.06.24

アメリカカンザイシロアリ

アメリカカンザイシロアリの駆除に密着!

WRITER

田中勇史

WRITER

田中 勇史

しろあり防除施工士

田中勇史

大学では昆虫類の研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。これまで3000件を超える家屋の床下を調査。皇居内の施設や帝釈天といった重要文化財の蟻害調査も実施。大学の海外調査にも協力。

こんにちは。シロアリ1番!の田中です。

先日、外来種のシロアリである「アメリカカンザイシロアリ」の駆除を実施してきました。

アメリカカンザイシロアリは”アメリカ”という名前でお気づきかも知れませんが、北アメリカ原産の外来シロアリです。

日本への侵入が確認されたのは今から40年以上も前になりますが、その勢力は未だ衰えるどころか徐々に生息範囲を広げ日本各地に定着している厄介なシロアリです。

今回、アメリカカンザイシロアリの被害を受けている建物の解体をされるとのことで、周囲への拡散防止のため解体前駆除を実施する運びとなりました。

その時の様子を弊社施工スタッフに密着しながらレポートしていきます!

アメリカカンザイシロアリは駆除困難種!?

駆除が困難なアメリカカンザイシロアリ

アメリカカンザイシロアリは在来種のヤマトシロアリやイエシロアリと異なり、建物のどこからでも被害を発生させる厄介なシロアリです。

なぜ、そのような状況が生まれるのでしょうか?

アメリカカンザイシロアリの「カンザイ」は漢字では「乾材」と書き、その名の通り乾燥した木材を好んでエサとするシロアリです。(湿潤した木材を全く食べないわけではありません)

カンザイシロアリの仲間が在来種であるヤマトシロアリやイエシロアリとは大きく異なる点、それは「侵入経路」です。

ヤマトシロアリやイエシロアリは「土中生活種」と呼ばれ、基本的には土の中で暮らしています。そのため、必ず建物へ侵入する際には地中を経由することになります。

一方、カンザイシロアリの仲間は「完全木材営巣種」と呼ばれ、建物に侵入する際に地中を全く経由しません。

この違いは非常に重要なポイントです。

というのも、土中生活種のシロアリであれば床下への薬剤処理で効果的に侵入を防ぐことができ、シロアリの予防法としても既に確立されています。

一方の完全木材営巣種は、羽アリが飛んだ先に木材があればそのままそこから侵入ができてしまいます。

例えば通気口や水切り下、ベランダや屋根、クラック(ひび割れ)に至るまでほんの僅かな隙間さえあれば、床下以外のどんな場所からでも羽アリは木材に入り込むことができるのです。

このことがカンザイシロアリを、建物のどこからでも被害を出す恐れのある非常に厄介なシロアリたらしめている理由だと言えます。(南西諸島に分布する「ダイコクシロアリ」もアメリカカンザイシロアリと同様の被害をもたらします)

アメリカカンザイシロアリ駆除の調査手順


アメリカカンザイシロアリは厄介な生き物ではありますが、ちゃんと適した駆除施工があります。

ここからはアメリカカンザイシロアリの被害や駆除の様子をご紹介していきます!

①被害や駆除範囲の調査

まずは事前調査で被害実態を確認していきます。

室内に入ると、いたるところに木屑のような粉粒が散乱していました。こちらは階段に散らばっている状態です。

実はこの粒々こそがアメリカカンザイシロアリの被害かどうかを判断する重要な材料です。

というのも、この粒粒はアメリカカンザイシロアリの”糞”なのです!

糞があるということは、家の中の木材が食べられている事になります。つまり、この糞が見つかれば100%アメリカカンザイシロアリの被害が発生しています。

カンザイシロアリ調査の第一歩は、この糞の確認から始まります。

糞の大きさは0.7~0.9mmほどで、色はこげ茶色や肌色をしています。そのため、肉眼では小さな砂粒にしか見えません。

もし怪しいと思った時はルーペや顕微鏡、ない場合はカメラの拡大機能などを使って見てみましょう。

俵のようなカタチに縦線が入っていればそれはカンザイシロアリの糞です。

また、”硬さ”でもある程度判別することができます。

アメリカカンザイシロアリの糞は非常に固く、指で潰すことはできません。指ですり潰せるなら別の原因が考えられます。

②糞があるようなら糞孔を探す

糞を見つけたら次は排出口を見つける

もし糞を発見した時は、次にその糞がどこから排出されているのかを調べます。

ただし、一般の方では発見するのが困難な場合も多いため、もし糞はあるけど穴は見つからないという時は、速やかに専門業者にお願いして適切な対処をしてもらうようにしてください。

糞の排出口は「糞孔」と呼ばれ、画鋲の穴くらいの大きさをしています。

糞孔から糞が溢れているようであれば直ぐに発見できるでしょう。しかし、このように毎回簡単に見つけられるわけではありません。

というのも、糞孔はアメリカカンザイシロアリの活動が活発になるほど溢れ出てくることがありますが、反対に糞が詰まって見えにくくなる場合もあります。

また、たとえ穴を発見したとしてもそれがアメリカカンザイシロアリの糞孔なのか人工的な穴なのか、パッと見分けるのは難しいです。

しかも、アメリカカンザイシロアリの糞孔はたった一箇所のみである場合や天井・壁・柱・床など複数の場所に散在している場合など様々なパターンがあります。

そのことから、糞孔の発見は総じて熟練した技術と知識が必要であると言えます。

調査でわかった被害の実態

2階を調査

在来種のシロアリで被害が発生するのは基本的に1階部分です。しかしこれまでの経験からして、アメリカカンザイシロアリの被害は1階よりも2階での被害が多く見られます。

もちろん1階や床下といった箇所で被害が出ないわけではないのですが、どうも小屋裏や2階から下の方へと被害が進行していくケースが多いのです。

こちらの建物でも、2階の至るところに糞が散乱していました。

なぜ2階や小屋裏の方が被害が多いかというと、先程触れたアメリカカンザイシロアリの「降り立った場所から侵入し住み着くことができる」という特殊な生態が原因であると考えられます。このことについては後ほど詳しくお話ししたいと思います。

こちらは窓枠に見られた被害です。

アメリカカンザイシロアリの被害が発覚する原因は、比較的人目につきやすい窓枠や柱であることが多いです。

また、そもそも窓は開け締めなどで隙間ができやすく、その分アメリカカンザイシロアリが侵入するリスクが大きい場所です。このことも被害を発見しやすい要因だと思います。

長押のくぼみに溜まった糞。発生源は主に2つ

和室には長押(なげし)という、洋服などをハンガーで吊るすのによく使われている造作があります。脚立に上がって確認してみると、長押のくぼみにも糞が溜まっていました。

この場合、考えられる可能性は2つあります。

1つは天井の際(廻り縁)から糞が落ちてきているケース。

長押は壁に沿って取り付けられています。そのため上から落ちてきた糞が長押に溜まっていることが多くあります。

もう1つは壁内部から糞が排出されているケース。

先ほど長押は壁に沿って取り付けられているとお話ししましたが、その壁が途中から無くなって空洞になっている場合があります(長押の窪みに手を入れて指先で壁側を押してみると分かります)。

壁の内部で上から落ちてきた糞がその空洞を通り長押内に流れ込んでくることもあります。

今回のケースは天井からのパターンでした。

天井板を確認したところ、無数の糞孔が確認できました。これでは長押内に留まるどころか、天井の至るところから糞が落ちて来てしまいます。

また、天井板に糞の排出孔が見られるということは、100%小屋裏(2階の屋根裏)や天井裏(1階と2階の間にある空間)に被害が出ていることを意味します。

先ほどもお話ししたように、アメリカカンザイシロアリの被害は上から下へと拡大していく傾向にあります。

早速小屋裏にも入って実際に確認してみましょう。

小屋裏に侵入すると…

糞の量だけ木材の質量が奪われている

小屋裏にはびっくりするほどの糞が堆積していました。

断熱材の上にみられるのは全て堆積した糞です。このように堆積した場所が十数箇所もありました。

アメリカカンザイシロアリは木材の中で木材のみを食べて生活しています。つまり、これらの糞は元は建物に使われていた木材、少なくともこれら糞以上の質量が建物の木材から失われたことを意味します。

そう考えるとちょっと怖いですよね。

ちなみにどうして小屋裏で被害が大きくなりがちかというと、小屋裏はアメリカカンザイシロアリにとって住処として最適な空間だからです。

小屋裏には外からの通風を取り入れる換気孔がありますので、アメリカカンザイシロアリはそこから簡単に侵入することができます。

しかも小屋裏の木材はほぼ無防備(露出している)な状態。いくらでも木材を食べ、営巣ができてしまうのです。

また、アメリカカンザイシロアリにとっては安全面も確保されています。

小屋裏は夏場は非常に暑くなり、50℃を上回ることもあります。とてもシロアリが耐えられる温度ではありません。

しかしカンザイシロアリの巣である木材の内部は温度変化が外に比べて少なくなっています。このことから、本来ならば過酷な環境であっても死なずに生き延びることができるのです。

こうして数年間誰にも気付かれることなく着実に木材を食い荒らして巣を大きくし、巣が成熟した後は新たな巣を作るために羽アリを飛ばします。その羽アリが新たな巣を小屋裏の別の場所に作ります。

これが繰り返されたらどうなるか、容易に想像がつきますよね。

建物の外周りを調査

外回りもアメリカカンザイシロアリの痕跡(糞の排出等)を見つけられるポイントです。

木造の屋外倉庫にある庇には糞が大量に溜まっていました。また、外基礎通気口にも糞が堆積しているところを見つけました。

通気口などに糞が堆積している光景は、被害密集地域ではよく見られます。

これらの堆積物が無いかを定期的に確認しておくことは、アメリカカンザイシロアリ被害の早期発見に繋がります。

このような確認作業は専門業者でなくても一般の方が普段の生活の中で簡単に行うことができますので、掃除や水やりなどの際にはぜひ併せてチェックしてみてください。

床下で感じた被害の違和感

先ほど発見した通気口から糞が出ている場所を床下側から確認したところ、ある違和感を感じました。

床下の木材にはほとんど被害が見当たらなかったのです。

発生している糞の量と比べて明らかに見合っておらず、別の場所で被害が発生しているのでは?という疑問が出てきました。

そこで目をつけたのが「外壁」です。

外壁は見た目では被害が発生しているかどうかを判断することができません。しかし状況からして内側で被害が発生していることが疑われました。

こういった判断もやはり知識と経験が重要だと言えます。

外壁を解体して被害実態を確認していきます(今回は解体現場のため実施)。グラインダーなどを使用して大掛かりに被害箇所の特定を実施していきました。

外壁を剥がすとそこにいたのは•••

外壁を剥がすと中には糞が溜まり、シロアリも生息していました。

さらにびっくりなのが、アメリカカンザイシロアリの女王と王がそこにいたことです。じっとしていて全く逃げる素振りはありませんでした。

開けた箇所がまさに王室だったのでしょう…。

シロアリからすると突然のことでしょうし、かわいそうになりますが、家を食い荒らす害虫としてこの時ばかりは考えなくてはなりません。

室内、小屋裏、床下、外回りと全体を確認していきこちらの建物のアメリカカンザイシロアリ被害調査は完了しました。被害としては、建物の土台から小屋裏まで全体に拡がっており、その全ての被害部に処理をおこなわなければなりません。

アメリカカンザイシロアリの駆除工事開始!

十分な調査を行ったところでいよいよアメリカカンザイシロアリの駆除をおこなっていきます。

駆除は小屋裏からスタートします。

方法は様々ですが、まずは最も基本的な「穿孔注入処理」を実施します。

小屋裏は足の踏み場所がほとんど無いので通常は2人ほどで作業をしていきます。白い断熱材の部分は体重をかけると天井を突き破ってしまいますので踏み外さないように注意を払わなければいけません。

アメリカカンザイシロアリに用いる薬剤は、薬剤成分としては一般的な床下で使われるネオニコチノイド系薬剤と同じものですが、木部内部にできる限り長く薬剤を留めておくためにムース状の薬剤を使います。

これを専用の注入機材を用いて木部内部のシロアリが生息する空間へと薬剤を充填していくわけですが、薬剤を注入すると隣に開けた穴から薬剤が飛び出すのが確認できますね。

この現象を確認することが重要なポイントです。

というのも、たとえ木材の表面には被害の兆候が見当たらなかったとしても、実は内部にはシロアリが移動に使う道や生活空間が無数にあります。

アメリカカンザイシロアリを駆除するには、これらの狭い空間一つ一つに薬剤を浸透させる必要があるのです。

薬剤を注入した穴とは別の穴から薬剤が出てくるということは、木材の内部でしっかりとシロアリの生息空間を捉えていることを意味しています。これらの現象を頼りに穴の開ける位置の調整をしながら施工は行われます。

小屋裏は全体に被害が拡がっていたため、全体的な噴霧処理も同時に実施しました。これで小屋裏の解体前駆除処理は完了です。続いて2階~1階の処理を行います。

こちらも基本的には、被害部分にドリルで穴あけ→薬剤注入の流れです。この作業を被害が発生している場所全てに実施しました。このあとも1階や外回りの処理も行い、2日がかりでこちらの現場のアメリカカンザイシロアリ解体前駆除を施工しました。

アメリカカンザイシロアリの駆除を終えて


今回アメリカカンザイシロアリの駆除施工に同行して1番衝撃だったのは、そこまで被害がなさそうな木材でも薬剤を入れるとどんどんムース剤が入っていく箇所が非常に多かったことです。

見えない所で被害が進行するとはまさにこのコトか!と感じざるを得ませんでした。

表面は何とも無さそうでも、実は水面下でシロアリの被害が着々と進行している・・・そんな事態はどんな建物でも起こりうると認識しておく必要があると思います。

ヒアリのような人間に直接害がある外来生物は世間でも危険視されている一方、建物の厄介者が日本に侵入していることはそこまで知られていません。

地震大国の日本において、シロアリの食害による木材の強度低下は大地震発生時の建物倒壊にも大きな影響を与えています。アメリカカンザイシロアリだと気づかずに被害を見逃されることがないように、私たちも努めていかなければなりません。

この記事をココまで読んで頂いた方々はカンザイシロアリの潜在的な怖さや特殊性が理解できたのではないでしょうか。とにかく早期発見が大切ですので、お住まいの地域で被害を聞いたことが無かったとしても、日頃からカンザイシロアリの糞や形跡に注意してみてください。

アメリカカンザイシロアリのように木材の内部に侵入したシロアリを市販薬だけで対処するのは非常に困難であると言わざるを得ません。もしも、写真のような穴や茶色い粒粒をお家や家の周辺で見かけたら、一度専門業者に調査をしてもらうことをおすすめします。

アメリカカンザイシロアリについてはこちらのページでより詳しくご紹介していますので、興味を持っていただけた方はぜひこちらも参考にしてみてください。