シロアリ駆除はホウ酸でも行える?メリット・デメリットを解説|シロアリ1番!

COLUMN

シロアリコラム

投稿日 2020.05.07 / 更新日 2023.12.15

シロアリ駆除

シロアリ駆除はホウ酸でも行える?メリット・デメリットを解説

WRITER

田中勇史

WRITER

田中 勇史

(公社)日本しろあり対策協会 防除技術委員

田中勇史

大学では昆虫類の研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。これまで3000件を超える家屋の床下を調査。皇居内の施設や帝釈天といった重要文化財の蟻害調査も実施。大学の海外調査にも協力。しろあり防除施工士。白蟻専科研究室長。
YouTube:シロアリ駆除Channel

「シロアリ駆除をホウ酸で行おうと考えています」
「ホウ酸のシロアリ駆除剤について詳しく知りたいです」

最近、シロアリ防除にホウ酸を使いたいというお話を度々いただきます。ホウ酸は他の薬剤より安全性が高い、ランニングコストがかからない、とネット上で言われることが多いです。そこでこの記事では、実際のところホウ酸は何が違うのか、そして安全性は高いのか、という部分について解説します。

シロアリ1番!が選ばれる理由

ホウ酸がシロアリ駆除に有効と考えられている理由

シロアリ駆除の薬剤としてホウ酸が使われる理由には、様々な理由があります。例えば、防蟻効果が半永久だったり、人体に安全な点が挙げられます。

シロアリ予防効果が長期間持続する

ホウ酸は鉱物由来の無機物系の化学物質です。シロアリ防除で一般的に使われる合成薬剤は有機物ですので5年程度で効力が消失します。しかしホウ酸は経年で分解がされないので半永久的に効力が持続します

また、ホウ酸には防蟻効果だけでなく防腐効果もあります。日本ではJIS規格の問題もあってあまり普及していませんが、海外では家を組み立てる前の木材にあらかじめ薬剤を注入しておく加圧注入材の成分としてホウ酸が利用されています。

人体に安全と言われている

ホウ酸はゴキブリの駆除にも用いられていますが、これは虫が体内でホウ酸を分解できない性質を利用しています。

しかし肝臓を臓器として持つ人体や犬や猫などの哺乳類はホウ酸を体内で分解できるため、安全な薬剤であると言われています。そのためホウ酸はシロアリ駆除やゴキブリ用のホウ酸団子以外にも繊維系の断熱材に防虫成分として混ぜ込んで使われることや、目薬の防腐成分に使われることもあります。もちろん通常の薬剤と同じく誤った取り扱いをしてしまうと人体に害を及ぼしてしまうので細心の注意を払って使用する必要があります。

外来種のシロアリ予防に対しても効果を見込める

通常の薬剤よりも効果が長期間持続する性質を利用して外来種のシロアリの予防に利用されることがあります。

外来種のアメリカカンザイシロアリは、土の下では一切生活を行わないタイプのシロアリです。外から飛んできて木材に定着し、じわじわと木材を食べていく厄介なシロアリですが、新築時にあらゆる木材の表面にホウ酸薬剤を散布して予防する例があります。

ホウ酸の安全性は高いのか

ホウ酸は安全性の高い薬剤として謳われます。しかし、実際には公益社団法人日本しろあり対策協会で認定された薬剤は今の所ありません

ホウ酸の法的な規制

化管法の第一種指定化学物質に指定

ホウ酸を含むホウ素系化合物は、化管法の第一種指定化学物質に指定されています。

第一種特定化学物質とは、難分解性、高蓄積性及び長期毒性又は高次捕食動物への慢性毒性を有する化学物質です。
第一種特定化学物質については、製造又は輸入の許可(原則禁止)、使用の制限、政令指定製品の輸入制限や第一種取扱事業者に対する基準適合義務及び表示義務等が規定されております。
引用:経済産業省

 
このように、化管法の第一種指定化学物質は有害性を持つ物質です。

土壌汚染対策法の第二種特定有害物質に指定

土壌汚染対策法とは、土壌汚染の状況を把握して健康被害を防止するために定められた法律です。第二種特定有害物質9種類の中にホウ素およびその化合物が含まれています。

他にも様々な法規制がある

化学物質審査規制法 一般化学物質
化学物質排出把握管理促進法(化管法) 第一種指定化学物質
大気汚染防止法 有害大気汚染物質
水質汚濁防止法 排水基準、事故時措置
水道法 水質基準項目
下水道法 排水基準
土壌汚染対策法 特定有害物質
海洋汚染防止法 有害液体物質Y類同程度
食品衛生法

引用:環境省

このように、ホウ酸は環境や人体の健康に影響を及ぼす可能性がある物質なのです。そのため、水道法の水質基準ではホウ酸は1mg/l以下(ホウ素換算)と定められています。

半永久効果は「分解したくてもできない」の裏返し

上記のように、土壌汚染や水質汚染の危険性があるホウ酸は、防蟻薬剤として使う際に「半永久的に効果が持続します」という言葉が使われます。実はこの半永久こそが法規制の理由でもあるのです。

私たちエンドユーザーの立場で考えれば、一回やればメンテナンスフリーになることはメリットでしかありません。しかし、万が一外部流失したときのリスクは全くと言っていいほど語られることがありません。

「分解されにくく除去が難しい」「蓄積性が高く土壌を汚染する」「水に溶けやすく地下水汚染につながる」 といった大きな問題が浮かんできます。より大きな視点で考えれば、ホウ酸は環境に負荷がかかる恐れがある物質であることが想像できるのではないでしょうか。

ホウ酸と他の薬剤を比較すると

ホウ酸と別の薬剤を比較するとどのような違いが見られるでしょうか。比較対象に、シロアリ駆除剤として普及しているクロチアニジン(合成薬剤)を使ってみましょう。

以下は物質の毒性指標であるLD50での比較です。LD50とは、対象動物の50%が致死する物質の量のことで、様々な物質を数値で比較することができます。

物質名 急性経口毒性(ラット)LD50(mg/kg)
ビタミンC 11,900
クロチアニジン(ネオニコチノイド系薬剤) 5000以上
食塩 3000〜3500
ホウ酸 2430〜3000
カフェイン 174~192

 
数値は大きいほど安全性が高い物質となります。比較として身近な物質であるビタミンC、食塩、カフェインも含めていますが、クロチアニジン、ホウ酸ともにカフェインよりも安全性が高く、食塩と同程度かそれ以上となっています。

LD50の数値で見れば、ホウ酸の安全性が食塩と同程度であるのと同時に、合成薬剤であるクロチアニジンのほうがより安全性が高い、ということが分かります。

ホウ酸でシロアリ駆除を行う際のデメリット

ここまで、ホウ酸でシロアリ駆除を行うメリットや安全性について解説しました。
ホウ酸を用いたシロアリ駆除には多くのメリットがある一方で、環境へ負荷がかかる物質でもあることをお分かりいただけたと思います。ここからは、実際にホウ酸を使用したときに起こる具体的なデメリットについても見てみましょう。

水分が多い場所で使えない

ホウ酸は水にとても溶けやすいので水気の多い場所での使用はできません。しかし、シロアリの主な侵入経路である床下は湿気が溜まりやすい場所のため、通常シロアリ対策は土壌など床下の地面を中心に施されます。

ホウ酸は土壌では使用できないため、ホウ酸が使われることの多い海外でも基本的に通常の合成薬剤を使用します。仮に土壌など水分が多い場所にホウ酸が流失してしまうと、環境への影響が懸念されるためです。

田中
田中
ホウ酸系防蟻剤は日本産業規格JIS K1571による試験にて防腐防蟻性能が確認されています。しかし、通常の試験方法ではなく、水に濡れない場所など用途が限定された試験方法のため、通常の試験での性能は明らかになっていません。
参考:日本しろあり対策協会

効果が発揮されるまでに時間がかかる

ホウ酸がシロアリに対して効果を発揮するにはある程度の時間を要します。

ホウ酸は木材を食べたシロアリがそれを巣に持ち帰り、餌として仲間に分け与えたりお互いの身体を舐めあう性質(グルーミング)を利用して巣のシロアリ全体に効果を及ぼすことで効果を発揮します。そのため駆除を行う場合も効果が出始めるまでに2~3ヶ月ほどの時間を要する事を覚えておきましょう。

床下や小屋裏のメンテナンスが難しくなる可能性がある

ホウ酸による施工を行なったことで床下や小屋裏の定期的なチェックやメンテナンスが難しくなる場合があるのではないかと思われます。

少し次元は違うかも知れませんがシロアリ1番!にご依頼をいただいたとある現場では、床下全面に大量の粒状の炭が敷き詰められており、移動をするだけで大量の粉塵が舞ってマスクも真っ黒になってしまう状況だったので作業はとても困難を極めました。

ホウ酸処理についても粉状のホウ酸を直接散布する工法が用いられる事があるようですが、大量のホウ酸がそのままの形で残り続けることを意味します。建物状況調査などを依頼した際に「これでは進入しての調査はできない」と調査を断られてしまうリスクが考えられます。

しろあり対策協会の認定薬剤ではない

ホウ酸は公益社団法人日本しろあり対策協会の認定薬剤には選定されていません。その理由は次のページにて紹介されていますが、これまでご紹介してきたデメリットが考慮されています。

 

まとめ

シロアリ駆除にホウ酸を使うべきか、それ以外の薬剤を使うべきか、最終的には皆さんの判断に委ねられます。

ただし、私たちが言えるのは世界中には様々な薬剤が存在していて合成薬剤であってもホウ酸系薬剤であっても、それがシロアリに効果がある薬剤であればメリットもデメリットも必ずあるということです。

これでなければならない、ということはありません。どちらか一方だけを否定するような情報に惑わされず、客観的な視点を持ってシロアリ駆除の薬剤を選択するようにしましょう。

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「クリーンなイメージとしてのシロアリ防除業界のパイオニアであり続ける」。私たちシロアリ1番!は、安心で確実なシロアリ駆除・予防をご提供するため、お客様のことを第一に考えたサービス作りをします。点検・工事・お見積りのことなど、シロアリ対策でお困りの点がありましたらお気軽にご相談ください。

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