カンザイシロアリに効果があるのは?ホウ酸系薬剤とムース系薬剤を比較してみた|シロアリ1番!

COLUMN

シロアリコラム

投稿日 2021.11.01

アメリカカンザイシロアリ

カンザイシロアリに効果があるのは?ホウ酸系薬剤とムース系薬剤を比較してみた

WRITER

田中勇史

WRITER

田中 勇史

しろあり防除施工士

田中勇史

大学では昆虫類の研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。これまで3000件を超える家屋の床下を調査。皇居内の施設や帝釈天といった重要文化財の蟻害調査も実施。大学の海外調査にも協力。

こんにちは。シロアリ1番!の田中です。

今回は、「カンザイシロアリに効果的な薬剤」というテーマでお話しをしていきます。

カンザイシロアリは以前よりシロアリ業界の中でも騒がれている外来種のシロアリです。その所以は、有効な対処法が確立されていないことにあります。

カンザイシロアリに対して、様々な薬剤が、効果が有る無いで話がなされている訳ですが、その中でも業界で賛否が大きく別れる薬剤の1つが「ホウ酸」です。

ホウ酸は「カンザイシロアリに非常に効果的だ」という声がある一方で、その有効性を疑問視する声も挙がっています。

そこで今回はホウ酸について、有効性を他の薬剤と比較する検証実験を行って見ました。

ホウ酸とネオニコチノイド

今回ホウ酸との比較に用いたのは「ネオニコチノイド系」の薬剤です。

カンザイシロアリの駆除に使用される薬剤で現在主流になっているのは、ネオニコチノイド系の薬剤です。

ネオニコチノイド系はヤマトシロアリにも用いられる、シロアリ駆除の主流成分の1つとなっています。

また、カンザイシロアリに用いる際には木材の中へ薬剤を注入させるため、重力によって木材内の薬剤層に偏りがでないよう、ムース状にしてあることが多いです。

一方、最近よく話題に上がるホウ酸系薬剤は、現在主として3種類あります。

具体的な名前を出すことはここでは控えさせていただき、試験においてはホウ酸A、ホウ酸B、ホウ酸Cとしてデータを出しております。

検証実験は予想外の結果に

今回、検証実験には「強制接触試験」と呼ばれる方式を採用しました。

強制接触試験は、薬剤処理を施した木材を敷いた容器に直接シロアリを放ち、その後の経過を観察することでシロアリの死亡数を見ていく、という試験になります。

弊社の予想としては、ホウ酸というもの自体は鉱物の粉末であり、一般的には喫食毒性(生き物がそれを食べるなどし、体内に取り込まれない限り効果が発動されない)に当たる薬剤という認識があり、試験を行っても木材をシロアリが齧らなければ死ぬ個体は出ないと思っていました。

ところが、結果は異なりました。

ホウ酸A~Cの3種でも結果は異なってはいるものの、実際は想像していたよりもはるかに多い死虫数が得られました。

特にホウ酸Aに関しては10日間の試験で全体の70%近い個体の死亡が確認され、高い効果が現れることが分かりました。その他のホウ酸系薬剤に関しても死虫率こそ低いものの少なからず死亡する個体は現れることがデータから得られており、ここで一つの疑問にたどり着いたのです。

ここで1つの疑問が浮かぶことになります。

シロアリはなぜ死んだのか?

そう、なぜシロアリは死んだのか?という疑問です。

試験を実施している間、シロアリの行動を観察していましたが、実際シロアリが木部に齧りつくような行動を見たことは一度もありませんでした。

また、薬剤が効果を発動するもう一つの要因にグルーミングというものがあります。

グルーミングというのはシロアリが仲間同士で体に着いた不純物を綺麗にするため、舐め合う行動ですが、実際にその行動による死因であったとすれば、今度は逆に死亡数が少ない気もします。

疑問に思った私は研究所の方や大学の先生方に、弊社で出た結果を基にその疑問を投げかけてみることにしました。

結論としては時間の経過とともに効果は表れ、長い期間でみれば全ての個体は死滅するという結果が得られていました。ただし、その期間中に喫食毒性である特性上、食害に遭うことも分かっており、これは薬剤性能試験での基準値3%以下という数値を上回っています。

ホウ酸は食べなければ効果が得られない薬剤です。

食害に遭うということは想定内のことであるとはいえ、このことは「薬剤の効果がある」と言う際に難しい問題となることは確かです。

この疑問を解き明かすべく、今度は普段より使用している一般的なカンザイシロアリ薬剤との比較をしてみることにしました。

階級による死虫率の違いを発見

一般的に用いられる薬剤はクロチアニジンを有効成分とする薬剤がほとんどで日本におけるシロアリ対策でも最も有名な薬剤です。

試験方法はホウ酸系薬剤と同様のものを使用し、その効果を確認しました。

試験期間はホウ酸系薬剤と同様に10日間で設定。

その中でのシロアリの死虫率を見ていきました。

結果からお話すると10日もいりませんでした。

8日目の段階で全ての個体の死亡を確認したためです。

シロアリ投入からわずか1日で半数以上の死亡が確認され、6日目辺りではほぼ全てのシロアリの死亡が確認されています。

ただし、ここで少々予想外の出来事が発生していたことも事実です。

ニンフには薬剤抵抗性があるのか?

それは生き残った個体が全てニンフと呼ばれる羽蟻一歩手前の段階の個体に限られていたというもの。

なぜそのような現象が起こったのでしょうか?

しかも、そのニンフは最終的に羽蟻にまで変態を遂げたこともお伝えしておきます。

更に不思議なことに羽蟻になった個体を同様の処理で観察したところ、羽蟻では1日で全ての個体が死滅するという結果が得られました。

ニンフのみが薬剤に対し高い薬剤抵抗性を示したことになるのです。

仮説として、自然界ではニンフの状態でいることで外敵などに襲われ、巣を放棄しなければならなくなった際にすぐに羽蟻となって違う場所へと飛び立てるようにしているのではないかと考えています。

以前私は、被害家屋の解体現場を確認した際に何も処理されないまま解体され、木材などが置かれたままになっていると数日のうちに羽蟻が飛び立つ現象を目にしたことがあります。

このようなことから、すぐに羽蟻へと変化可能なニンフに高い薬剤抵抗性を持たせておくことは生存戦略としては理にかなっているのです。

勿論、しっかりと薬剤が体に付着しさえすれば効果はニンフであっても現れることも分かっており、現在主流とされる薬剤注入施工(木材にドリルで穴を開け、専用ノズルを用いて木材内部の蟻の道に薬剤を充填させる施工方法)においての注意点として、しっかりと的確に木材中に存在する蟻の道を捉え、薬剤を充填させることが確実な駆除を行う上で最も必要なことだということを、この結果は教えてくれているのです。

実験の総括

結果から見れば、ホウ酸系薬剤と現在カンザイシロアリ駆除で用いられることの多いムース系薬剤との比較では軍配はムース系薬剤に上がっているのではないでしょうか。

カンザイシロアリの駆除においては、木材中に生息するシロアリに対し、逃げてしまう前にしっかりとした効果が発現してくれる薬剤が好ましいと言えます。

しっかり処理周辺にいたシロアリに対して効果が現れ、なおかつ持続的なところまでも望めることはカンザイシロアリ駆除においてとても有効な薬剤と言えるのです。

ホウ酸系薬剤も長い期間で見れば効果は得られる可能性はありますが、効果発動までかなりの期間が必要になることや効果が出る時に食害は受けてしまうという点においては、弊社がもしホウ酸系薬剤を使用しようと考えた際に、そこは問題点として捉えるポイントとなりうるでしょう。

まとめ

今回は巷で噂されるホウ酸系薬剤と現在使用頻度の最も高いムース系薬剤での効果の違いを見てみました。

結論として、ホウ酸系薬剤ではまだまだカンザイシロアリに対し、使用した際に確実な効果が望めるという結果は得られませんでしたが、現在使用している薬剤に固執せず様々な薬剤をテストし、カンザイシロアリに本当に有効な対策とは何かを模索していくことは絶対に必要なことです。

弊社も新たな方向性を模索しながら日々、技術の向上を目指しています。